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マジカルミライ2016で見た、ミクたちの次の可能性

9月10日、11日の2日間、千葉の幕張メッセ(9-11ホール)で開かれた初音ミクのイベント「マジカルミライ2016」へ行ってきました。

 

2013年に横浜アリーナで行われて以来、毎年初音ミクの誕生日の頃に行われるこのイベント。自分も毎年足を運んでいました。

今回の企画展ではPlayStationVRを初めとしたゲームや、オリジナル商品の物販、ドール、CD、サイン会、DJステージなど大盛り上がりだったのですが、一番の目玉であるライブがとてもよかったのです。 

そのライブのセトリはこちら。

1 39みゅーじっく!/みきとP/初音ミク
2 ゴーストルール/DECO*27/初音ミク
3 ヒビカセ/GigaReol/初音ミク
4 Strangers/Heavenz/初音ミク
5 すろぉもぉしょん/ピノキオピー/初音ミク
6 独りんぼエンヴィー/koyori(電ポルP) /初音ミク
7 タイムマシン/1640mP/初音ミク
8 Hello, Worker/KEI/巡音ルカ
9 どりーみんチュチュ/emon/巡音ルカ
10 愛Dee/Mitchie M/初音ミク巡音ルカ
11 ドクター=ファンクビート/nyanyannya/KAITO
12 Nostalogic (MEIKO-SAN mix)/yuukiss/MEIKO
13 どうぶつ占い/すこっぷ/初音ミク
14 Calc./ジミーサムP初音ミク
15 ウミユリ海底譚/n-buna/初音ミク
16 テレカクシ思春期/HoneyWorks鏡音レン
17 スイートマジック/Junky/鏡音リン
18 リモコン/じーざす(ワンダフル☆オポチュニティ!)/鏡音リン鏡音レン
19 Baby Maniacs -Eight Mix-/八王子P/初音ミク
20 ラズベリー*モンスター/HoneyWorks初音ミク
21 39/sasakure.UK×DECO*27/初音ミク
22 shake it!/emon/初音ミク鏡音リン鏡音レン
23 ray/BUMP OF CHICKEN初音ミク(ミク調声:kz(livetune))

【アンコール】
24 Satisfaction/livetune初音ミク
25 なりすましゲンガー/KulfiQ/鏡音リン初音ミク
26 Hand in Hand/livetune初音ミク

 

このセトリと各楽曲の演出などについて自分が思ったことをつらつらと。

 ・これまでの「ミクらしさ」からの脱却

これまでのマジカルミライなどのライブでは、毎回必ず組み込まれているミクの代表曲といいますか、ミク現象を象徴する楽曲が2曲ありました。1曲は、2011年に世界中でオンエアされたGoogleのCMに起用されたlivetuneの楽曲「Tell Your World」、そしてもう1曲はミクの黎明期を代表するクリエイター集団「Supercell」で、ボカロPとして楽曲を制作したRyo氏が、その人気ゆえに向き合うこととなった苦悩と、その先の希望を描いた「ODDS & ENDS」。

どちらもミクの様々なコラボ企画が盛んになった2012年にリリースされ、ミクが様々なクリエイターの手によってその人気と知名度を広げたことを描いた、ミクファンにとっても特に人気のある楽曲でしたが、今回のセットリストのとおり、今回はこの2曲がありませんでした。特に、黎明期から特大な人気を誇っていたSupercellが手掛けた楽曲は1曲もなしです。

しかし、それでも今回のライブは大盛り上がりでした。ボカロシーンへの興味が薄れていくことを危惧するような歌詞が印象的な「ヒビカセ」や、アンコール最後、昨年のマジカルミライ2015のテーマソングになっていたlivetuneによる楽曲「Hand in Hand」が、これまでの代表曲の代わりの役割を果たしているようにも思えました。

タイムマシン」「Calc.」といった初期から愛されてきた曲も含まれつつ、今回のライブでは、これまでミクに起きた一連のストーリーと感傷から少し離れ、そこから一歩踏み出そうという意志を感じました。

 ・初期にも通じる遊び心

そして触れておくべきなのは、今回のライブの1曲目であり、今回のイベントのテーマソングでもあったみきとPの「39みゅーじっく!」。最初のカウントアップで期待感を煽り、カウントが「39」に達したところでミクの登場。からいきなり、イントロ部分で三代目J Soul Brothersのようなランニングマンの振り付けを披露。この曲では他にも、バブル期のようなボディコンの振り付け、腕を上下に振るモンキーダンス、そして「とにかく明るい安村」の全裸ポーズまで、とにかく楽曲に合わせて遊び心をふんだんに入れた振り付けで、観客を驚かせました。今までのマジカルミライでもあまりない演出でしたが、もともとニコニコ動画では(いい意味で)悪ふざけ感のある動画もあっただけにこれはこれで当初のミクさんっぽいなぁと思いました。

 ・ミク以外の面々もパワーアップ

また、もうひとつ特筆すべきは、各キャラのモジュール(衣装)が新しく登場したこと。MEIKO以外は楽曲も今年ライブで初出しで、MEIKOも楽曲は昨年と同じでありつつ、マジカルミライでは初めてモジュールがデフォルトではないものに変わりました。

特にこれまでずっとデフォルト衣装だったKAITOは初めてモジュールが変更され、そのビジュアルにテンションが最高潮になったKAITO推しのお姉様方もたくさんいました。

 ・ミクのライブで初めて披露された、バンプとのコラボ曲「ray」

これまでのマジカルミライでの終盤の定番曲というと前述の「ODDS & ENDS」だったのですが、今年その代わりに披露されたのが、2014年3月12日にリリースされたBUMP OF CHICKENとのコラボ曲ray」の初音ミクソロバージョンでした。イントロが始まったとき、会場が騒然としました。

この曲は、BUMP OF CHICKEN(以降バンプ)がもともとミクとのコラボ等を考慮せず作っていた楽曲でしたが、プロモーションの一環としてミクをフィーチャリングしたバージョンを制作し、さらに共演PVも製作されたものです。ミクがライブでこの歌を歌ったのは過去に2度。2014年のMTVによるイベント「VMAJ」で、この曲でミクの調声を担当したlivetuneのkz氏によるリミックスバージョンをミクが披露した時と、同年7月31日に行われたバンプの東京ドームでのライブにて、ミクがゲスト出演した時のみでした。当時大きな話題になりましたが、マジカルミライなどのミクの公式のライブイベントでは、この歌が披露されるのはこれが初めてです。

前述のとおり、この曲はボカロPではなく、BUMP OF CHICKENという第一線を走るバンドによる楽曲でしたが、その曲もマジカルミライで解禁されたのは、これまでミクを発展させてきたCGMの枠に留まらず、様々なコラボレーションを行うようになった「今の初音ミク」を象徴するようでした。しかし、以前の一時期なら若干反感を買われたかもしれないような試みでも、今回特にブーイングもなく、むしろ好評な意見ばかりが聞かれるようでした。ファンの側も受け入れられるような雰囲気になっていたのかもしれないなと、このライブで実感しました。

 ・9年経ってもこの先が楽しみなミク達の展開

今やボカロの動画を見たり、最新の曲を知ってる人は少なくなりつつあるのでしょう。それでも、ミク達の姿を見たい、ライブを見たいという気持ちを持っている人が、まだこの世界にはたくさんいます。だからこそ、今でも大掛かりなイベントに人が集まっています。

また、今回1日目に、ミクのライブを初めて見る友人を誘ってライブを見ました。その友人はミクの曲もあまり知らなかったのですが、それでも初めてのライブを楽しかったと言ってくれました。

ミクも海外進出、故冨田勲氏を含む著名アーティストとのコラボレーション、ミュージックステーションなどへのテレビ出演と、もうこれ以上何をやればいいんだ!というところまで登り詰めているはずなのですが、今回のマジカルミライでミクたちのこれからの展開がまた楽しみになってきました。そんなミクも来年で10周年。すでに来年のマジカルミライも、来年9月1日〜3日に開催することが決定しています。

まだまだ可能性のなくならないボカロの世界。一歩大きく踏み出したように見えるミク達を、これからもずっと見守って行きたい。そう思わせるイベントでした。